アステラス製薬株式会社 |
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『自己紹介』私は、2001年6月に薬品化学研究室にて学位を取得し、約1年間アメリカでポスドクを経験した後、製薬会社に就職しました。 入社以来、一貫して創薬研究(メディシナルケミストリー)に携わっています。
私が、佐治木先生に出会ったのは、3回生の学生実習でした。グローバルな経験談を交えて非常に楽しそうに授業をして下さる先生に惹かれると同時に、化学実験の面白さを教えて頂きました。その後、薬品化学研究室に配属になり、運命的に佐治木先生のご指導を受けることとなり、Pd/C(en)触媒の開発に携わることができました。また、脱塩素化反応やH-D交換反応など偶然の発見の喜びも経験させて頂きました。 『企業での研究』メディシナルケミストリーの仕事は、薬を創るために世の中にまだない生理活性物質を発明することです。薬理活性はもちろん、物性、体内動態、安全性も考慮しながら、化合物をデザインします。デザインした化合物を合成するためには、有機化学の高い専門性が必要となります。
製薬企業での研究のゴールは、病気で苦しむ患者さんに薬を届けることです。最新の設備を使用し、トップクラスの研究者と日々議論することができ、非常にやりがいのある仕事です。また、目まぐるしく変化する外部環境の中、自身も変化に対応すべく日々努力が必要です。 『後輩のみなさんへ』研究室在籍中に佐治木先生から多くのことを吸収してください。現在もそうですが、佐治木先生は当時から非常にアクティブな方です。持ち前の会話力を活かし、ご自身のテリトリーをどんどん広げていかれます。海外企業でのご経験もあり、非常に視野が広く、教育者としても超一流です。教授の先生方の中でも企業(しかも海外)での経験をお持ちの先生はそれほど多くないと思います。そういった意味でも薬品化学研究室は非常に良い環境だと思います。
みなさんは、授業や研究のため多くの知識を身につける必要があると思いますが、それと同時に若い時から論理的思考を身につけて下さい。言葉にすると簡単ですが、物事に筋道を立てて考え、表現することは、非常に重要でどこででも通用するスキルです。社会で活躍する岐阜薬卒業生が益々増えることを期待しています。
2017年8月 |
富山化学工業株式会社 前嶋 寿英 さん |
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私は2007年から6年間佐治木教授のご指導の下、有機化学の研究に携わり、2013年3月に博士課程の学位を修得いたしました。その後、2013年4月に富山化学工業株式会社に入社し、3年間CMC研究部に所属いたしました。 現在は、グループ会社である富士フイルム株式会社に出向し、医薬品の探索?開発に従事しております。
簡単ではありますが、以下に私のこれまでの携わった仕事内容と就職してからこれまでに私が感じたこと、思ったことについて述べさせていただきます。
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日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 生産技術研究所 森 重樹 さん |
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私は2003年から2009年までの6年間薬品化学研究室に在籍し、現在は医薬品のプロセス化学研究に従事しています。
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塩野義製薬株式会社 CMC技術研究所 製薬研究センター 栗田 貴教 さん |
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私は佐治木先生の下、薬品化学研究室にて学位を取得した後、平成20年4月より塩野義製薬株式会社 CMC技術研究所 製薬センターに勤務しています。 入社して約1年とまだ日が浅く、新しい環境で様々なことを学んでいる段階ですが、製薬企業におけるプロセス化学の内容や大学の研究との違いについて感じたことを簡単に紹介させて頂きます。 ちなみに、CMCとはChemistry, Manufacturing and Controlsの略称で、大きくは製薬、製剤及び分析部門が属しています。 医薬品のプロセス化学と業務内容医薬品の開発研究は創薬化学(Medicinal Chemistry)とプロセス化学(Process Chemistry)に大別されます。創薬化学は医薬品候補化合物を生み出すための研究を行い、プロセス化学は候補化合物の大量製造法の開発から上市後の医薬品の製造法改良まで幅広く研究を行います。また、創薬化学では多数の化合物を合成し、高活性な化合物を探求するのに対して、プロセス化学ではある化合物の最適な合成ルートを探求するということもできます。 私の所属しているプロセス化中国福彩网門では、特に非臨床試験から初期の臨床試験用原薬の製造法設定を行っています。原薬の要求量としては数kg~百十kg程度で、200 Lから1000 L程度の反応釜を有する製造プラントを想定して製造法を設定します。 具体的には、開発候補化合物が決定したら、安全性、経済性、操作性及び再現性を考慮した合成ルートの検討を行います。その後、フラスコ実験により反応条件の最適化を実施します。フラスコ実験は、グラムスケールで行い、基本的にTLCは使用せず、HPLCによって反応率や不純物の含量を評価します。合成ルートが決定し、各種安全性の評価が完了したら、実際にプラントで製造が実施されます。 大学の研究との違い 私自身が感じた大学の研究との違いを幾つか挙げてみます。 ① 安全性の担保(反応熱の精査と制御)製造法を設定する上で、安全性を担保することは最も重要です。 特に、発熱やガスの副生する反応や後処理に対しては、十分に制御可能な製造法にする必要があります。 大学の実験ではミリグラムスケールで行うことが多いため、僅かな発熱やガスの発生について大きな問題になることは少なかったと思いますが、それが製造スケールともなると大きな事故に繋がる危険性もあります。 そのため、フラスコ実験の段階で、反応熱を測定し、製造プロセスの安全性を担保しています。 ② 製造設備(反応釜)の特徴と化学工学反応釜では、スケール効果によりフラスコとは同じよう扱うことのできない点が多くあります。 スケールが大きくなることで、加熱冷却効率や撹拌効率が低下し、操作にかかる時間が長くなり、フラスコ実験では認められなかったような不純物が副生してしまうといった問題が生じることもあります。 従って、フラスコ実験の段階から、時間的な要因を考慮した安定性データを取得する等スケールアップファクターに対応した検討が重要です。また、フラスコ実験の実績値から反応釜での条件(撹拌速度やジャケット温度)を算出するには、化学工学の知識も必要となります。 実験室では一般的な操作でもプラント製造では困難なことも幾つかあります。例えば、フラスコ実験では濃縮乾固は一般的に行われますが、反応釜ではその構造上濃縮乾固は困難なので、通常はある程度溶媒が残った状態で次工程へ引き継ぎます。他にも、分液操作後に乾燥剤は使用せず、脱水が必要な場合には共沸脱水を検討します。 ③ 晶析の重要性プラント製造においては、生成物は晶析(結晶化)により取り出します。 晶析では、収率良く目的の化合物を得るのみではなく、結晶多形の制御、ろ過や乾燥に適した結晶形が得られる晶析条件を設定する必要があります。晶析は最終工程となるので、その技術は極めて重要です。 プロセス化学の面白さプロセス化学では、単に目的の化合物を合成するために化学反応を使うのではなく、主反応条件の設定から晶析、後処理に至るまで反応の全てを制御し、最高のプロセスを構築することを目指します。その過程は有機化学や化学工学そのものであり、これらを駆使し、その醍醐味を存分に味わうことの出来る魅力的な仕事であると思います。 また、医薬品のプロセス化学では非臨床試験から上市後の改良検討まで長い期間携わるので、開発候補化合物の成長を一緒に見届けることができるという楽しみもあります。 そして、自分達が設定した製造法の医薬品が世界中の患者さんの役に立つ、そんな日が来るのも夢ではありません。 塩野義製薬の紹介創業は1887年、会社設立は1919年と歴史ある製薬企業です。今年で創設131年。現在、医療用医薬品事業が売上高全体の90%以上を占めており、「循環/代謝」「感染/免疫」「癌/疼痛」の3領域に特化した研究開発型の製薬企業です。 販売している一部の医薬品及び番組提供を紹介します。 医療用医薬品抗生物質: フロモックス、フィニバックス、シオマリン、フルマリン 高コレステロール治療薬: クレストール 癌疼痛薬: MSコンチン、オキシコンチン 一般用医薬品ポポンS、セデス、パイロン 番組提供:シオノギ?ミュージックフェア(毎週土曜日18:00~18:30 フジテレビ系にて放送)
塩野義製薬(http://www.shionogi.co.jp/)
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エヌ?イー?ケムキャット株式会社 水﨑智照 さん | |
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触媒とは窒素(N2)と水素(H2)が結びついてアンモニア(NH3)になることはよく知られています。このようにある物質と結びついて新たな物質へと変化する化学反応を、よりスムーズに、効率よく進める役目を担っているのが“触媒”です。 “触媒”はいわば化学反応の総まとめ役、つまりプロデューサーのような仕事をするものといえます。 弊社(エヌ?イーケムキャット株式会社)紹介弊社は国内最大級の貴金属の化学加工メーカーとして、エネルギー、自動車、石油化学、ファインケミカル、医薬品、公害防止など、さまざまな分野で活用する“触媒”を開発?製造?提供しています。 石油から色鮮やかな衣服をつくる。貴重な燃料からより効率良くエネルギーを取り出す。私たちを取り巻く環境をよりクリーンにする。現代社会を支える化学反応のプロデューサーである“触媒”を通して、豊かな社会創造に貢献しています。 私が行っている業務内容私は現在、弊社で製品化を前提とした貴金属固体触媒の研究開発業務に従事しています。触媒活性金属としては、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムなどを主とし、担体には各種活性炭、アルミナ、シリカ等の粉末、成型体、あるいは粒状体を用います。 また触媒調製の条件(原料塩、担体の素性、固定化法、主成分濃度、副生成物の種類及び濃度)を変化させた場合の、各種基質に対する活性、及び選択性の変化などについて調査?研究を行っています。 さらに、EPMA、比表面積、金属分散度、細孔分布などの物理化学的手法を駆使し、触媒の物性解析を行い、触媒構造に関する知見と反応活性、選択性、及び調製条件との関連性を探っています。 一言まだまだ勉強中の身です。化学のフィールドから社会貢献できるように努力していきたいです。
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